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interview

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第2回目(後半)「幸せと暮らしを支えるために」

インタビュー

本記事は後半になります。前半はこちら

北島 由美さん

ベア・オリーブ株式会社
ベア・オリーブ訪問看護ステーション 管理者/看護師

森川 悦明

聴き手
医療法人社団フォルクモア
事務局長

 

病院では患者様がゲスト、訪問看護では患者様がホストになる

 

森川
北島さんからみると、訪問看護と病棟看護の違いは、どんなところにありますか。
北島
まず、看護の目標という観点で違いを考えると、病棟看護の目標は、治療が円滑に進むよう支援を行うところにありますが、在宅看護の目標は、暮らしの場所であるご自宅で、ご本人が幸せに過ごすために何ができるかということを考えて、生活を支援していくということになります。治療への支援なのか、生活への支援なのかでは、看護師として見ていく景色がまったく違うと思います。
また、ゲストとホストという視点でみると、病院では医療をする場所に患者さんがゲストとして来られますが、在宅の場合はまったく逆で、ホストは患者さんやご家族で、そこに医師や看護師がゲストとして訪問することになります。 病棟や病院では、滞在する患者さんに対して、ルールや方針に従って治療を行います。一方、ご自宅では、ご本人やご家族の生活のリズム、大切にしていること、決まり事、価値観などがそれぞれにありますから、私たちがそれを理解しないと信頼を得ることはできず、看護することも難しいので、病院と大きな違いがあります。
森川
病院では、医師や看護師がいて24時間絶え間なく医療が継続できますが、常時の対応ができない在宅での看護の心得を教えてください。
北島
訪問医療では、決まった曜日・時間に医師や看護師が伺うことになるので、他の時間は、ご本人やご家族が管理をしなくてはなりません。病院では、患者さんの生活を管理する専門職が常勤し情報共有していますが、在宅ではさまざまな専門職の方が関係してくるので、チーム医療を行っていくという調整力が、医師や看護師に求められます。このあたりがダイナミックだなあと思っています。

在宅看護の看護師は、スペシャリストというより何でも屋さん
その方の歴史や背景、生活などの情報を繋ぎ伝える

森川
訪問看護を依頼される方は、初めから病院と在宅との違いを理解されているものなのでしょうか。病院に入院するように、在宅でより多くの医療や看護を求めたり、依存したりしないのでしょうか。
北島
依頼される方々は、いろいろなニーズをお持ちなので、それこそ何でもやってもらえると思っている方も、確かにいらっしゃいます。ご自宅で出来ることには限界がありますので、そこをしっかりとお話しして、ご本人やご家族に何ができるのか、できないのかを確認し、そのうえでどういうサービスを取り入れていけばいいのかを決めていただきます。大切なことは、ご本人やご家族がどんな風に暮らしていきたいのか、病気とどんなふうに付き合っていきたいのかということだと思います。それをしっかり聴き取り、私たちができることを提案していきます。
森川
こうして伺っていると、訪問看護での看護師の役割は大きく、負担が大きいことが分かりますが、病棟の看護師とは、思いやスキルはずいぶん異なるものですか。
北島
訪問看護では、患者様にセルフケア能力があれば、それを活かして少しのお手伝いで健やかに暮らしていける場合がありますし、重症化していって日常生活全般にわたってお手伝いが必要な場合もあります。個々の状況によって看護をアレンジすることが必要ですから、在宅での看護師は専門家というより、なんでも屋さん、ジェネラリストという感じです。患者さんの、そのときそのときの状態を見ながら、臨機応変に看護をアレンジしていく力が求められます。
患者さんは、生活の背景も十人十色ですし、いくつもの病気を合わせ持っている方も多いので、広い目で、その方の生活や病気をとらえていくことが大切だと思います。在宅ではいろいろなアンテナを張りながら、その方を見て行かないとなりません。
たとえば、認知症の方だったら、カレンダーがめくれていないとか、お茶の入っているコップのお茶はいつから入っているのかなとか、そういった様子を見ながら繋ぎ合わせていくような力が必要になります。ですから、在宅では特別なスキルというのではないですが、観察力が必要で、そこから得た情報が何を示しているのかを考える洞察力が大切だと思います。
看護師には、療養上のお世話と診療の補助という二大業務があります。診療の補助というと注射だとか医療補助を想像しがちですか、医師が適切な診断や治療が行えるように、いかに訪問看護師が情報を提供できるかということが診療の補助だと思っています。その人の人生や背景、生活などの情報を持っているのが看護師ですから、その情報を繋ぎながら、医師がその方にとって一番良い選択ができるように情報を届けることが重要だと思います。医学的に正しい治療が、その人にとって正しい治療とは限らないからです。

ご本人やご家族の自己決定を支えていくことが一番大切なこと

森川
なるほど。そうすると、訪問看護を行うなかで、一番大切にしていることや、心がけていることは、どのようなことでしょう。
北島
一番大切にしていることは「自己決定を支えていく」ということです。その人らしさということは難しいことでもあるのですが、その人らしさを大切にしながら支えていくという考えが、一貫して根付いていることが必要だと思います。分かりやすい言葉で言えば、ご自身が最後、どこで過ごされたいかということにつながると思います。看取りの場をどこで、どういう風にしたいのかということです。当然、延命に関する考えもそうです。
私たちが行った看護を、ご依頼を受けた方々にフィードバックしていくことも大切にしています。いま、このように進んでいます、このようになりました、という報告を必ず行っています。私たちに患者さんを託してくださった病院のソーシャルワーカーやケアマネジャーの方々に、私たちがどう応えたかをお伝えすることで、私たちの看護を理解していただくことになり、また次に繋がっていくのだと思います。
森川
今後、ますます在宅で暮らす需要が高まり、地域との連携でサービスを行っていく必要が増していくと思います。一緒に頑張って、ますます地域での連携を深めていきましょう。
本日は、とても頼りになる心強いお話しをいただき、ありがとうございました。
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